京都西山美女谷からポンポン山'12.2.16 

立石橋-西山古道-柳谷観音岐-ベニカン-大沢-川久保尾根大杉-川久保渓谷メガネ橋-美女谷-東海自然歩道-ポンポン山-竃ヶ谷
-森ノ案内所-東尾根-釈迦岳-川久保尾根大杉-パノラマ台-東への尾根-西山古道-嫁入道-西山キャンプ場-立石林道-立石橋

 寒波続く日々なのですが、もとよりこれは立春あたりから寒さに着物を重ねて着るとのことで如月といわれるように寒いのが2月なんですね。そうです、これくらいの寒さでちじこまっている訳にはいきません。

 そうだ、美女谷を歩こう!とコースは躊躇なく即決です。しかし川久保渓谷沿いのメガネ橋を渡って登りのわずかな林道を詰めると登山口からもう荒んでいます。やむをえません、本来登山道でなく山仕事道のようなものなのですからほとんど登山者の歩く姿などあろうはずありません
 谷への古い伐採木の散乱などで次第に踏み跡も消えかかって、小谷にかかる七つの古い旧い板橋も苔蒸して崩壊寸前でもありますが、このような箇所を動転もせず、むしろ嬉々として身をくねらせながら行くのです。
 そこには青年のように抗う水音だけが、あたかも心を癒せと命じているような時が流れており、このような様に虜となってしまうのです。
 冴え冴えとした空気のなかに静かな谷あいへ身を置くのが、私にとって心置きなく山を楽しむひとつの所作だと思って行動しがちです。 

左岸から見下ろす川久保渓谷に架かるメガネ橋 珍しく指導標のある右折する最後の谷筋

 さて今回はほとんど植物的には取りざたできそうな種はありそうにはないのですが、それでもシダ類は寒い今頃は私にとって結構な見ごたえのあるものなのです。

ホソバカナワラビ(オシダ科)最下羽片下向きに長い
コウヤコケシノブ(コケシノブ科)右は葉裏 裂変に鋸歯ありが特徴
ウチワゴケ(コケシノブ科)右は葉裏 葉の形が丸い団扇のよう

 シダ類を観察しながら西山古道十人橋からすぐの急登、ベニカンから大沢、大きな一本杉から本日のメインルートである美女谷を巡ってポンポン山に11時半ころ上がりました。
 空は今にも泣きそうなどんよりと高雲りとなっていますが、それでもなんとか愛宕方面は顔見世があります。久しぶりに山頂は凍結が解けたのか泥んこ状態寸前で足元注意ですが、なんとか御中を拵えると竃ヶ谷へ向かいます。

 でもこの寒さですからやはりフクジュソウはまったくで、鹿よけ金網の外から見下ろすだけで谷へ下って行きます。残念ではありますが、あちこちに希少植物保護のための金網柵設置作業が継続中で、このような様子は目を覆うばかりではありますが、それも一時やむをえないでしょう。
 しかし伐採が進み森は以前より相当明るくなっており、これからはこれまでにもにもまして山野草の楽しめる谷となるのを願わずにはおられません。
 ここの谷のよさはなんといっても心地よい小川のせせらぎがBGMとなって、気持ちも和み逡巡も怠惰も許される日常の喧騒を嫌ってここへ向かってしまうのです。

 もちろんコガネネコノメソウもまだ姿まったくなく、ここにはあのキンキエンゴサクが、あそこにはトウゴクサバノオのお花がと、早春の花々に心遊ばせながら進みます。
 そして僅かな浅瀬の渡渉を繰り返して誰も居ない森の案内所で心静かに一本です。壁に下がった温度計は2度でしたが、いつの間にか日が照って明るく青空が広がってきています。小屋の建つ深閑な一帯はすぐに春も近くなるような雰囲気を醸し出しています。

 さぁ、この後は東尾根を登ってイヌブナの広場を覗こうと立ち上がります。いきなりの急登もわずかで、すぐに稜線です。いろいろな広場が整備され、とりわけ松枯れ対策の一環としての手が入るなど、それぞれの広場を見ながら歩くコースなのです。

 そして小屋からわずかで、すばらしい光景が今日はじめて見る山のような姿をみせているのでした。それは殺伐とした岩稜のアルプスの山では見られない、木漏れ陽の戯れているのをぼんやりと眺めているときのような、ほのかなやさしさが感じられる低山歩きの醍醐味とおぼしき稜線上の松並木の道でした。

すばらしき雰囲気でお気に入り

 この松林はコース中にはこのあたりのみなので、雰囲気のよさが余計に感ぜられる場所といえます。なんどか目を追った昔の漱石の草枕の冒頭文がすぐに思い出されました。。

 「山道を登りながら、こう考えた。 智に働けば、角が立つ。
 情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。
 人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。」

 私の些細な記憶は忘却の彼方となってしまっているために、漱石のページを開く時をここへきて清冽な動悸に襲われたような気がしてしまった・・などと思いながら歩くとイヌブナの森到着でした。

 こちらもよく手入れがされて、株別れしたイヌブナが何本も屹立しています。ホンブナとの相違点はいろいろあるのですが、木肌の違いが最たるものではないでしょうか。
 ホンブナのシロブナとの別名に対して、イヌブナはクロブナといわれるように黒っぽくさらにいぼ状の皮目が多いことです。なお、この山塊にはホンブナは見当たらないようです。

 後は東尾根ルートをほぼ樹林帯の中、小さなアップダウンを重ねて東海自然歩道へ出た後は釈迦岳です。ここまでにマンサクはまだかなぁと探し歩きましたが、やはりこの種も開花未だ先のようでした。

 そして川久保尾根の一本杉地まで下り、五辻を東へバックするように巻いてパノラマ台到着です。ここの展望も気が弾みます。なぜなら我が家の2階から見える箇所なんです。もっともいつもどこか、どこかと見るのですが、流石にウサギ小屋では検討もつきません。いつも次は望遠鏡持参と思いながら遂忘れてばかりです。笑
 それより中央に巨大な蛇のようにくねった変なものが見えるようになりましたが、それは工事中の第二外環状の高速道路です。もっとも画像ではよく分かりませんね。

 画像の真ん中あたりにある朽ちかけた第二ベンチの後ろより東への尾根を降りて、西山古道よりいよいよ最後のルートの嫁入道です。
 この道は4月中旬ころともなりますとコバノミツバツツジで、贅沢な花歩きの尾根となるのが楽しみで今か今かと待ち遠しいところです。

 西山キャンプ場に出て立石林道から立石橋にゴールでしたが、この後も自宅まで40分ほど歩いて帰ります。。本日は自宅より計9時間半の遊山でした。

 最後に私は子供のころより『開巻有益』と教えられて読書が大好きでしたが、未だに流暢に語れず訥々とした文章は私のすべての面伏な感情いずれもが邪な心消えず、どんな言葉でもってしても陶冶されないようです。トホホ・・・

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